電験マンのブログ

電験三種の過去問の回答・解説を掲載します。

電験三種 R2(2020年).機械 問3

[問題]
三相かご形誘導電動機の等価回路定数の測定に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

ただし,等価回路としては一次換算した一相分の簡易等価回路( L 形等価回路)を対象とする。

(1) 一次巻線の抵抗測定は静止状態において直流で行う。巻線抵抗値を換算するための基準巻線温度は絶縁材料の耐熱クラスによって定められており, 75 ℃ や 115 ℃ などの値が用いられる。

(2) 一次巻線の抵抗測定では,電動機の一次巻線の各端子間で測定した抵抗値の平均値から,基準巻線温度における一次巻線の抵抗値を決められた数式を用いて計算する。

(3) 無負荷試験では,電動機の一次巻線に定格周波数の定格一次電圧を印加して無負荷運転し,一次側において電圧 [V] ,電流 [A] 及び電力 [W] を測定する。

(4) 拘束試験では,電動機の回転子を回転しないように拘束して,一次巻線に定格周波数の定格一次電圧を印加して通電し,一次側において電圧 [V] ,電流 [A] 及び電力 [W] を測定する。

(5) 励磁回路のサセプタンスは無負荷試験により,一次二次の合成漏れリアクタンスと二次抵抗は拘束試験により求められる。

[解説・回答]
三相かご形誘導電動機の等価回路定数に関する問題ですが、正解するためにはかなり細かい知識を求められています。

選択肢を一つづつ見ていきます。

(1)は〇です。一次巻線の抵抗測定は静止状態において直流で行います。また、JISにより耐熱クラスが定められています。

(2)は〇です。問題文の通りです。これも知らないと判断できませんね。

(3)は〇です。誘導電動機のL型等価回路は以下の図1のように表せます。

ここで、無負荷試験時はすべり sが0になるため図中の二次抵抗 \dfrac{r_2}{s}が非常に大きな値となり、励磁回路にのみ電流が流れます。
従って励磁コンダクタンス g_0や励磁サセプタンス b_0を求めることが出来ます。

(4)は×です。拘束試験では電動機の回転子を回転しないように拘束することは正しいです。
拘束状態ではすべり sがほぼ1となる為、無負荷試験とは反対に電流はすべて負荷側に流れます。
この時、定格1次電圧を印加してしまうと、電流が大きくなりすぎて電動機が焼損してしまう可能性があるので、拘束試験時は弱い電圧を掛けて実施します。
またこの試験により1次2次の合成漏れリアクタンスと2次抵抗を求めることが出来ます。

(5)は〇です。(3)で解説した通り無負荷試験では励磁回路のサセプタンスを求めることが出来、(4)で解説した通り拘束試験により1次2次の合成漏れリアクタンスと2次抵抗を求めることが出来ます。

答え:(4)