電験三種 R2(2020年).機械問4 - 電験マンのブログ

[問題]
次の文章は，回転界磁形三相同期発電機の無負荷誘導起電力に関する記述である。

回転磁束を担う回転子磁極の周速を $v$ [m／s] ，磁束密度の瞬時値を $b$ [T] ，磁束と直交する導体の長さを $l$ [m] とすると， 1 本の導体に生じる誘導起電力 $e$ [V] は次式で表される。
$e=vbl$

極数を $p$ ，固定子内側の直径を $D$ [m] とすると，極ピッチ $τ$ [m] は $τ= \dfrac{πD}{p}$ であるから， $f$ [Hz] の起電力を生じる場合の周速 $v$ は $v=2τf$ である。
したがって，角周波数 $ω$ [rad／s] を $ω=2πf$ として，上述の磁束密度瞬時値 $b$ [T] を $b(t)=B_{m}sinωt$ と表した場合，導体 1 本あたりの誘導起電力の瞬時値 $e(t)$ は，

$e(t)=E_{m}sinωt$
$E_{m} =$ （ア） $Bml$
となる。

また、回転磁束の空間分布が正弦波でその最大値が $B_{m}$ のとき、1極の磁束密度の(　イ　) $B$ [T]は $B = \dfrac{2}{π}B_{m}$ であるから、1極の磁束 $Φ$ [Wb]は $Φ=\dfrac{2}{π}B_{m}τl$ である。
したがって1本の導体に生じる起電力の実効値は次のように表すことができる。
$\dfrac{E_{m}}{\sqrt{2}} = \dfrac{π}{\sqrt{2}}fΦ=2.22fΦ$

よって、三相同期発電機の1相あたりの直列に接続された電機子巻線の巻数を $N$ とすると、回転磁束の空間分布が正弦波の場合、1相あたりの誘導起電力(実効値) $E$ [V]は、
$E =$ （ウ） $fΦN$
となる。

さらに、電機子巻線には一般に短節巻と分布巻が採用されるので、これらを考慮した場合、1相あたりの誘導起電力Eは次のように表される。
$E =$ （ウ） $k_{w}fΦN$

ここで $k_{w}$ を(　エ　)という。

上記の記述中の空白箇所(ア)～(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)～(5)のうちから一つ選べ。

[解説・回答]
三相同期発電機に関する知識を問う問題です。問題文が長くて一見複雑そうですが、基本的な知識を問われているので正解したい問題です。

（ア）は空欄の前に色々と書いていますが、 $e=vbl$ と、 $v=2τf$ の式から、 $2τf$ が入ります。

（イ）は平均値、最大値、実効値の選択です。
ここは重要公式なので覚えておくことが必要です。磁束密度が $b(t)=B_{m}sinωt$ のようにsinカーブとなる場合、
その平均値は $\dfrac{2}{π}B_m$ 、実効値は $\dfrac{B_{m}}{\sqrt{2}}$ となります。
従って、（イ）は"平均値"となります。

（ウ）と（エ）も覚えておかないと回答できない問題です。
同期発電機の1相あたりの誘導起電力(実効値) $E$ [V]は、 $E = 4.44k_{w}fΦN$ と表すことが出来、 $k_{w}$ は、"巻線係数"と言います。
尚、巻線係数とは、実際の同機器の誘導起電力は理論値よりも低くなるので、その低下率を表しています。つまり、巻線係数は０～１の値を取ります。

ここまでを纏めると、（ア） $2τf$ 、（イ）平均値、（ウ）4.44、（エ）巻線係数となります。

答え：(3)