電験マンのブログ

電験三種の過去問の回答・解説を掲載します。

電験三種 R2(2020年).電力 問17

[問題]
図のような系統構成の三相 3 線式配電線路があり,開閉器 S は開いた状態にある。
各配電線の B 点, C 点, D 点には図のとおり負荷が接続されており,各点の負荷電流は B 点 40 A , C 点 30 A , D 点 60 A 一定とし,各負荷の力率は 100 % とする。
区間のこう長は A-B 間 1.5 km , B-S (開閉器)間 1.0 km , S(開閉器)-C 間 0.5 km , C-D 間 1.5 km , D-A 間 2.0 km である。
ただし,電線 1 線当たりの抵抗は 0.2 Ω/km とし,リアクタンスは無視するものとして,次の(a)及び(b)の問に答えよ。


(a) 電源 A 点から見た C 点の電圧降下の値 [V] として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし,電圧は相間電圧とする。

(1)  41.6
(2)  45.0
(3)  57.2
(4)  77.9
(5)  90.0

(b) 開閉器 S を投入した場合,開閉器 S を流れる電流 i の値 [A] として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)  20.0
(2)  25.4
(3)  27.5
(4)  43.8
(5)  65.4

[解説・回答]
配電線路の電圧降下に関する問題です。本問題は電力分野でよく出る分野の問題ですので確実に得点したいです。

(a)について
AC間の電圧降下を求めるためには、電流値と抵抗値を求める必要があります。
まず電流値ですが、問題図より、DC間の電流値 I_{DC}は30[A]、AD間の電流値 I_{AD}は90[A]となります。
(開閉器Sが開いているので、A→B→Cのルートでは電流は流れません。)
次に抵抗値ですが、問題文の電線 1 線当たりの抵抗は 0.2 Ω/km という記載から求めます。
DC間の抵抗値 R_{DC}は、 R_{DC}=0.2×1.5=0.3 [Ω]、AD間の抵抗値 R_{AD}=0.2×2=0.4は [Ω]となります。
以上の値を用いて、AC間の電圧降下を求めます。
三相 3 線式配電線路の電圧降下の値は、 ΔV=\sqrt{3}I(Rcosθ + Xsinθ)と表せます。
本問題では、力率は1となり、回路のリアクタンスは無視できますので、 ΔV=\sqrt{3}×(90×0.4+30×0.3) = 77.9 [V] となります。
三相 3 線式なので、 \sqrt{3}を掛けることを忘れないようにしましょう。

答え:(4)

(b)について
今度は開閉器Sが閉じたケースとなります。色々な解き方がありますが、A-C間の電圧降下に焦点を当てて考えてみたいと思います。
A-C間の電圧降下は、A→B→Cの順序で計算した値と、A→D→Cの順序で計算した値とは同じになるはずです。
まずは、A→B→Cの順序で計算した場合の電圧降下の式を考えます。
電圧降下を求めるには、電流値と抵抗値が必要です。
AB間の電流値 I_{AB}は、 I_{AB} = i + 40 [A]となります。
BC間の電流値 I_{BC}は、  I_{BC} = i [A]となります。
続いて抵抗値ですが、
AB間の抵抗値 I_{AB}は、 R_{AB} = 0.2×1.5 = 0.3 [Ω]となります。
BC間の抵抗値 I_{BC}は、 R_{BC} = 0.2×(1+0.5) = 0.3 [Ω]となります。
次に、それぞれの線路の電圧降下を求めます。
AB間の抵抗値 ΔV_{AB}は、 ΔV_{AB}=\sqrt{3}×0.3×(i + 40)=0.52i+20.8 [A]となります。
BC間の抵抗値 ΔV_{BC}は、 ΔV_{BC}=\sqrt{3}×0.3×i = 0.52i [A]となります。
従って、A→B→Cの順序で計算したAC間の電圧降下 ΔV_{ABC}は、 ΔV_{ABC} = 0.52i+20.8+0.52i = 1.04i+20.8 [A]となります。・・・(1)

次に、A→D→Cの順序で計算した電圧降下の式を求めます。
先にDC間から考えると、DC間の電流値 I_{DC}は、 I_{DC} = 30-i [A]となります。
AD間の電流値 I_{AD}は、 I_{AD} = 60+30-i = 90-i [A]となります。
抵抗値は(a)にて求めており、 R_{DC}=0.3[Ω]、 R_{AD}=0.4[Ω]です。
次に、それぞれの線路の電圧降下を求めます。
DC間の抵抗値 ΔV_{DC}は、 ΔV_{DC}=\sqrt{3}×0.3×(30-i) = 15.6-0.52i[A]となります。
AD間の抵抗値 ΔV_{AD}は、 ΔV_{AD}=\sqrt{3}×0.4×(90-i)=62.3-0.69i[A]となります。
従って、A→D→Cの順序で計算したAC間の電圧降下 ΔV_{ADC}は、 ΔV_{ADC} = 15.6-0.52i+62.3-0.69i = 77.9-1.21iとなります。・・・(2)

(1)と(2)で求めたAC間の電圧降下は同じ値となるので、 1.04i+20.8 = 77.9-1.21iとなり、これを解くと i = 25.37[A] となります。

答え:(2)