電験マンのブログ

電験三種の過去問の回答・解説を掲載します。

電験三種 R2(2020年).理論 問15

[問題]
図のように,線間電圧(実効値) 200 V の対称三相交流電源に, 1 台の単相電力計  W_1 , X=4 Ω の誘導性リアクタンス 3 個, R=9 Ω の抵抗 3 個を接続した回路がある。
単相電力計  W_1 の電流コイルは a 相に接続し,電圧コイルは b-c 相間に接続され,指示は正の値を示していた。
この回路について,次の(a)及び(b)の問に答えよ。

ただし,対称三相交流電源の相順は, a , b , c とし,単相電力計 W1 の損失は無視できるものとする。

(a)  R=9 Ω の抵抗に流れる電流  I_{ab} の実効値 [A] として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)  6.77
(2)  13.3
(3)  17.3
(4)  23.1
(5)  40.0

(b) 単相電力計 W1 の指示値  W_1 として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)  0
(2)  2.77
(3)  3.70
(4)  4.80
(5)  6.40

[解説・回答]
三相交流回路の特性、Δ-Y変換、電力計の計算方法など、複合的な知識を問われている問題です。
まずは、(a)について解説します。
問題の回路図を見ると誘導性リアクタンスXがΔ結線の外にあり、このままでは  I_{ab} の値を求めることが出来ません。
従って、1つ目のポイントとして、回路図のΔ→Y変換が必要となります。
Δ→Y変換を行うと、下の図1の通り内部の負荷は \dfrac{1}{3}倍となります。

 \dfrac{1}{3}倍になるということは覚えておいた方が良いですが、以下のように考えると覚えやすいです。
図1で、a→b間の抵抗値を考えると、それぞれ下の図2の通りとなります。

Δ結線の場合は、 R_Δ1つに2つの R_Δが並列に繋がった回路となりますので、合成抵抗値は \dfrac{2R_Δ×R_Δ}{2R_Δ+R_Δ} = \dfrac{2}{3}R_Δ となります。
Y結線の場合は、2つの抵抗が直列に並んでいるので、合成抵抗値は 2R_Yとなります。
2つの回路は等価となりますので、 R_Y = \dfrac{2}{3}R_Δ × \dfrac{1}{2} = \dfrac{1}{3}R_Δとなります。

次に、Δ→Y変換した回路を1相分だけ取り出すと図3の通りになります。

ここで2つ目のポイントですが、問題文の200Vは線間電圧となりますので、相電圧を考える場合は {\sqrt{3}}で割る必要があります。
ここもしっかり覚えておきましょう。
回路のインピーダンス Z = 5[Ω] となりますので、 \dfrac{200}{{\sqrt{3}}} = I_Y × 5となり、 I_Y = 23.1[A]となります。

最後に3つ目のポイントですが、 I_Yは線電流ですので、相電流  I_{ab}を求めるには {\sqrt{3}}で割る必要があります。
  I_{ab} = \dfrac{23.1}{{\sqrt{3}}} = 13.3[A]となります。

尚、仮に誘導性リアクタンスXが無かった場合の  I_{ab} の値を考えてみます。
この場合はΔ-Y変換をする必要が無く、相電圧200V = 線間電圧となりますので、
  I_{ab}=200/9= 22.2[A]となります。
従って、誘導性リアクタンスが追加されている回路では22.2[A]以下の電流値になると想定できますので、計算結果が(4)、(5)になった場合はどこかで間違えていると考えられます。
試験の際はその様に冷静に自分の答えを見直してみましょう。

答え:(2)

次に、(b)の解説です。(b)も難問ですが落ち着いて順番に考えていけば正しく回答できます。
まず、電力計の指示値Pは、P = VIcosθ[W]で表すことが出来ます。
以下でV,I,cosθそれぞれの値を求めていきます。
問題図を見ると、電流Iはa相を計測しています。a相の電流値は(a)で求めた I_Y値となりますので、23.1[A]となります。
電圧Vはb-c相を計測しています。問題文の線間電圧のことになりますので、200Vです。
問題はcosθです。a相の電流とb-c間との線間電圧の位相差を求める必要があります。
いきなり答えを出すことが難しいので、まずはa相の相電圧とa相の電流の位相差を考えます。
図3の回路図を用いてベクトル図を記載すると以下の図4の通りとなります。

a相の電流は相電圧よりも遅れが生じ、 cosθ_Δ = \dfrac{3}{{\sqrt{3^{2}+4^{2}}}} = 0.6となります。

次に、線間電圧と、相電圧 E_aの位相差を考えます。
この場合もベクトル図を書いてみます。

図5で、線間電圧は E_b-E_cとなりますので、線間電圧は相電圧 E_aから90°遅れることとなります。
a相の電流 I_Yと相電圧 E_aに位相差は、 θ =  \dfrac{π}{2}-θ_Δとなりますので、
 cosθは図4のベクトル図から、 cosθ = \dfrac{4}{{\sqrt{3^{2}+4^{2}}}} = 0.8となります。

最後に、電力計 W_1の値を求めます。
 W_1 = 23.1×200×0.8 = 3,696[W]  = 3.70[kW]となります。

答え:(3)