電験三種 R3(2021年).電力 問5
[問題]
原子力発電に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 原子力発電は,原子燃料の核分裂により発生する熱エネルギーで水を蒸気に変え,その蒸気で蒸気タービンを回し,タービンに連結された発電機で発電する。
(2) 軽水炉は,減速材に黒鉛,冷却材に軽水を使用する原子炉であり,原子炉圧力容器の中で直接蒸気を発生させる沸騰水型と,別置の蒸気発生器で蒸気を発生させる加圧水型がある。
(3) 軽水炉は,天然ウラン中のウラン 235 の濃度を 3~5 % 程度に濃縮した低濃縮ウランを原子燃料として用いる。
(4) 核分裂反応を起こさせるために熱中性子を用いる原子炉を熱中性子炉といい,軽水炉は熱中性子炉である。
(5) 沸騰水型原子炉の出力調整は,再循環ポンプによる冷却材再循環流量の調節と制御棒の挿入及び引き抜き操作により行われ,加圧水型原子炉の出力調整は,一次冷却材中のほう素濃度の調節と制御棒の挿入及び引き抜き操作により行われる。
[解説・回答]
原子力発電の仕組みや軽水炉などの構造に関する問題です。
基本的な内容と思いますので、正解したい問題です。
(1)は〇です。基礎知識として覚えておきたいですが、原子力発電は蒸気タービンを用います。
(2)は×です。
この選択肢を理解するためには、原子力発電で用いられる核分裂反応の仕組みを理解しておく必要があります。
核分裂反応の仕組みは以下の通りです。
1. 熱中性子が核分裂性物質(ウラン2359)に衝突し、核分裂が発生
2.エネルギーの放出及び高速中性子の発生
3.高速中性子が減速材により減速され熱中性子へ
4.1に戻る。
つまり、減速材とは、高速中性子を減速させ熱中性子にする働きを持ち、黒鉛でなく軽水が用いられます。
また、直接蒸気を発生させる原子炉は沸騰水型と呼び,別置の蒸気発生器で蒸気を発生させる原子炉は加圧水型と呼び、この部分は正解です。
(3)は〇です。これも基礎知識として覚えておきたいです。
(4)は〇です。(2)で記載した通り、核分裂反応には熱中性子を用います。
熱中性子を用いる原子炉を熱中性子炉と呼び、軽水炉も熱中性子炉となります。
(5)は〇です。沸騰水型と加圧水型の特徴は良く出題されるので押さえておきたい項目です。
尚、ほう素濃度の調節により出力調整が出来る原理を説明すると、ほう素は中性子を吸収しやすいので、ほう素濃度を高めることで原子炉の出力を低下させることが出来ます。
答え:(2)