電験マンのブログ

電験三種の過去問の回答・解説を掲載します。

電験三種 R3(2021年).電力 問7

[問題]
次の文章は,変電所の計器用変成器に関する記述である。

計器用変成器は、(ア) と変流器とに分けられ,高電圧あるいは大電流の回路から計器や (イ) に必要な適切な電圧や電流を取り出すために設置される。
変流器の二次端子には,常に (ウ) インピーダンスの負荷を接続しておく必要がある。また,一次端子のある変流器は,その端子を被測定線路に (エ) に接続する。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。



[解説・回答]
計器用変成器に関する問題です。
出題頻度も高く、かつこの問題は基礎的事項が問われているので確実に正解したい問題です。

(ア)
計器用変成器には、変圧器と変流器があります。
従って、"計器用変圧器"が入ります。
尚、CTはcurrent transformerの略で、日本語に直すと変流器となりますので、誤りです。

(イ)
計器用変成器は、異常電圧や電流を感知した際に電路の繋がりを断って、事故の影響を週日に広げない目的があります。
従って、"保護継電器"を動作させるために必要な電圧や電流を取り出すために設置されます。

(ウ)
変流器の二次側のインピーダンスを高くするか低くするかという事は良く出題されますので覚えておきたいです。
インピーダンスとすると二次側に電流を流すために過大な電圧がかかってしまうため、二次側は"低"インピーダンスとします。

(エ)
変流器の接続は、電流計と同じように"直列"に接続します。

以上を纏めると、(ア)計器用変圧器 、(イ)保護継電器、(ウ)低、(エ)直列、となります。

答え:(5)

電験三種 R3(2021年).電力 問6

[問題]
分散型電源に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 太陽電池で発生した直流の電力を交流系統に接続する場合は,インバータにより直流を交流に変換する。連系保護装置を用いると,系統の停電時などに電力の供給を止めることができる。

(2) 分散型電源からの逆潮流による系統電圧上昇を抑制する手段として,分散型電源の出力抑制や,電圧調整器を用いた電圧の制御などが行われる。

(3) 小水力発電では,河川や用水路などでの流込み式発電が用いられる場合が多い。

(4) 洋上の風力発電所と陸上の系統の接続では,海底ケーブルによる直流送電が用いられることがある。ケーブルでの直流送電のメリットとして,誘電損を考慮しなくてよいことなどが挙げられる。

(5) 一般的な燃料電池発電は,水素と酸素との吸熱反応を利用して電気エネルギーを作る発電方式であり,負荷変動に対する応答が早い。

[解説・回答]
新エネルギー、再生可能エネルギーに関する問題です。
この分野は良く出題されますが、比較的簡単な問題が多いので是非正解したいですね。

(1)は〇です。ポイントは、太陽電池は直流の電力を発生させることと、インバータで直交変換することです。連係保護装置は太陽光に限らず用いられます。

(2)は〇です。これは一般知識が問われていますね。再エネの出力抑制は良くニュースにもなっています。

(3)は〇です。小水力発電では流れ込み式(=貯水せずに自然流量で発電)を用いられることが多いです。

(4)は〇です。問題文の通り洋上風力発電では直流送電が用いられることがあります。と言っても日本の洋上風力はまだ例が少なく、直流送電も使われていません。

(5)は×です。燃料電池発電は水素と酸素の反応を利用しますが、吸熱では無く発熱反応となります。吸熱してしまうと電力を作るどころでは無いですね。

答え:(5)

電験三種 R3(2021年).電力 問5

[問題]
原子力発電に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 原子力発電は,原子燃料の核分裂により発生する熱エネルギーで水を蒸気に変え,その蒸気で蒸気タービンを回し,タービンに連結された発電機で発電する。

(2) 軽水炉は,減速材に黒鉛,冷却材に軽水を使用する原子炉であり,原子炉圧力容器の中で直接蒸気を発生させる沸騰水型と,別置の蒸気発生器で蒸気を発生させる加圧水型がある。

(3) 軽水炉は,天然ウラン中のウラン 235 の濃度を 3~5 % 程度に濃縮した低濃縮ウランを原子燃料として用いる。

(4) 核分裂反応を起こさせるために熱中性子を用いる原子炉を熱中性子炉といい,軽水炉は熱中性子炉である。

(5) 沸騰水型原子炉の出力調整は,再循環ポンプによる冷却材再循環流量の調節と制御棒の挿入及び引き抜き操作により行われ,加圧水型原子炉の出力調整は,一次冷却材中のほう素濃度の調節と制御棒の挿入及び引き抜き操作により行われる。

[解説・回答]
原子力発電の仕組みや軽水炉などの構造に関する問題です。
基本的な内容と思いますので、正解したい問題です。

(1)は〇です。基礎知識として覚えておきたいですが、原子力発電は蒸気タービンを用います。

(2)は×です。
この選択肢を理解するためには、原子力発電で用いられる核分裂反応の仕組みを理解しておく必要があります。

核分裂反応の仕組みは以下の通りです。
1. 熱中性子核分裂性物質(ウラン2359)に衝突し、核分裂が発生
2.エネルギーの放出及び高速中性子の発生
3.高速中性子が減速材により減速され熱中性子
4.1に戻る。

つまり、減速材とは、高速中性子を減速させ熱中性子にする働きを持ち、黒鉛でなく軽水が用いられます。

また、直接蒸気を発生させる原子炉は沸騰水型と呼び,別置の蒸気発生器で蒸気を発生させる原子炉は加圧水型と呼び、この部分は正解です。

(3)は〇です。これも基礎知識として覚えておきたいです。

(4)は〇です。(2)で記載した通り、核分裂反応には熱中性子を用います。
中性子を用いる原子炉を熱中性子炉と呼び、軽水炉も熱中性子炉となります。

(5)は〇です。沸騰水型と加圧水型の特徴は良く出題されるので押さえておきたい項目です。
尚、ほう素濃度の調節により出力調整が出来る原理を説明すると、ほう素は中性子を吸収しやすいので、ほう素濃度を高めることで原子炉の出力を低下させることが出来ます。

答え:(2)

電験三種 R3(2021年).電力 問4

[問題]
次の文章は,電気集じん装置に関する記述である。

火力発電所で発生する灰じんなどの微粒子は,電気集じん装置により除去される。典型的な電気集じん装置は,集じん電極である (ア) の間に放電電極である (イ) を置いた構造である。
電極間の (ウ) によって発生した (エ) 放電により生じたイオンで微粒子を帯電させ,クーロン力によって集じん電極で捕集する。
集じん電極に付着した微粒子は一般的に,集じん電極 (オ) 取り除く。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。


[解説・回答]
電気集塵装置に関する問題です。
かなり難しい、というかレアな問題ではないでしょうか。知っていないと解けないと思います。

電気集塵装置とは、火力発電所で燃料を燃焼する際に発生する有害な煤塵(ばいじん)を除去する装置のことです。
原理を簡単に記載すると、
・放電極(マイナス)と集塵極(プラス)の二つの電極を持っており、
・極間に高電圧をかけ、コロナ放電により放電極から放出されるマイナスイオンによって煤塵の微粒子を負(マイナス)に帯電させ、
・帯電した微粒子を集塵極に吸着し、分離・除去するものです。

選択肢を一つずつ見ていきますと、

(ア)は平板電極となります。線電極よりも吸着・捕集しやすいように平板電極を用います。

(イ)は線電極となります。放電させるためのものですので、平板電極の様な面積が不要な為、線電極を用います。

(ウ)と(エ)は、上記で記載した通り、高電圧とコロナが入ります。

(オ)は、「を槌でたたいて」となります。

以上を纏めると、
(ア)平板電極(イ)線電極(ウ)高電圧(エ)コロナ(オ)を槌でたたいて、となります。

答え:(4)

電験三種 R3(2021年).電力 問3

[問題]
汽力発電におけるボイラ設備に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) ボイラを水の循環方式によって分けると,自然循環ボイラ,強制循環ボイラ,貫流ボイラがある。

(2) 蒸気ドラム内には汽水分離器が設置されており,蒸発管から送られてくる飽和蒸気と水を分離する。

(3) 空気予熱器は,煙道ガスの余熱を燃焼用空気に回収することによって,ボイラ効率を高めるための熱交換器である。

(4) 節炭器は,煙道ガスの余熱を利用してボイラ給水を加熱することによって,ボイラ効率を高めるためのものである。

(5) 再熱器は,高圧タービンで仕事をした蒸気をボイラに戻して再加熱し,再び高圧タービンで仕事をさせるためのもので,熱効率の向上とタービン翼の腐食防止のために用いられている。

[解説・回答]

ボイラ設備に関する知識を問う問題です。基本的内容となっているので確実に正解したい問題です。
選択肢を一つずつ見ていきます。

(1)は〇です。
循環方式については言葉で説明すると分かりにくいのですが、図を用いた分かりやすい説明のあるサイトを紹介します。

em.ten-navi.com

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出典:E&M JOBS

(2)、(3)、(4)は〇です。問題文の通りで、ボイラに関する基礎的な知識となります。

(5)は×です。"再熱器は、高圧タービンで仕事をした蒸気をボイラに戻して再加熱し、"の部分は正しいですが、
"高圧タービンに仕事をさせる"、という部分が誤りです。
再加熱した蒸気は、中・低圧タービンで仕事をさせます。
また、仕事をした蒸気を再熱して同じタービンに戻すのであれば、通常のランキンサイクルとなりますので、わざわざ再熱器という名前は付けませんね。

答え:(5)

電験三種 R3(2021年).電力 問2

[問題]
図で,水圧管内を水が充満して流れている。断面 A では,内径 2.2 m ,流速 3 m/s ,圧力 24 kPa である。
このとき,断面 A との落差が 30 m ,内径 2 m の断面 B における流速 [m/s] と水圧 [kPa] の最も近い値の組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

ただし,重力加速度は 9.8 m/s2 ,水の密度は 1 000 kg/m3 ,円周率は 3.14 とする。





[解説・回答]

水力発電所における流体のエネルギーに関する問題です。
流体力学における連続の定理と、ベルヌーイの定理の公式を覚えておかないと解けない問題です。

流速 [m/s] と水圧 [kPa] の2つの計算が必要ですので、まずは流速 [m/s] から求めます。
流速 [m/s] を求めるには、連続の定理を用います。
連続の定理は、断面Aと断面Bを通過する単位時間当たりの流量[  m^3/s ]が等しくなるという定理です。
従ってまずは、断面Aを通過する単位時間当たりの流量 Q_A を求めます。
断面Aの断面積 S_A [  m^2 ]は、
 S_A=π×(\dfrac{2.2}{2})^2=3.8 [  m^2 ]となり、
 Q_A=3.8×3=11.4 [  m^3/s ] となります。

次に断面Bの断面積 S_B [  m^2 ]は、
 S_A=π×(\dfrac{2}{2})^2=3.14 [  m^2 ]となります。

断面Bを通過する単位時間当たりの流量 Q_Bは、  Q_Aと等しくなりますので、
断面Bの流速 v_Bは、
 V_B=\dfrac{11.4}{3.14}= 3.6 [  m/s ] となります。

次に、断面Bでの水圧を求めます。
ここでは、ベルヌーイの定理を用います。
ベルヌーイの定理は、簡単に言えば流体のエネルギー保存則となり、流体の位置エネルギー+運動エネルギー+圧力は常に一定となる、という法則です。
このように書くと簡単なのですが、公式が覚えづらく、通常は水頭を用いて表します。
位置水頭(位置エネルギー)  h、速度水頭(運動エネルギー)  \dfrac{v^2}{2g}、圧力水頭(圧力エネルギー)  \dfrac{p}{ρg}とすると、
 h+\dfrac{v^2}{2g}+\dfrac{p}{ρg} = constant となります。

水頭についても意味を理解すれば簡単ですが、以下のようにジュール単位で書いているエネルギーを mgで除して水柱の高さ(メートル単位)に直したものです。
位置エネルギー  mgh [  J ] →  h [  m ]
・運動エネルギー  \dfrac{1}{2}mv^2 [  J ] →  \dfrac{v^2}{2g} [  m ]
・圧力エネルギー  m \dfrac{p}{ρ} [  J ] →  \dfrac{p}{ρg} [  m ]

以上の式を用い、断面AとBにおけるエネルギーの総和が等しいことを利用し、断面Bでの水圧を求めます。
まず、断面Aでのエネルギーの総和は、
 h_A+\dfrac{v^2_A}{2g}+\dfrac{p_A}{ρg} = 30 + \dfrac{3^2}{2×9.8}+\dfrac{24×10^3}{1000×9.8} = 32.91 [  m ]  となります。

次に断面Bでのエネルギーの総和は、
 h_B+\dfrac{v^2_B}{2g}+\dfrac{p_B}{ρg} = 0+ \dfrac{3.6^2}{2×9.8} +\dfrac{P_B}{1000×9.8} = 0.66 + \dfrac{P_B}{1000×9.8} = 32.91 となります。
これを解くと、 P_B = 316050 [Pa] =  316 [kPa]となります。

答え:(3)

電験三種 R3(2021年).電力 問1

[問題]
水力発電所は (ア) を得る方法により分類すると,水路式ダム式ダム水路式があり, (イ) の利用方法により分類すると,流込み式,調整池式,貯水池式,揚水式がある。

一般的に,水路式ダム式ダム水路式に比べ (ウ) 。貯水ができないので発生電力の調整には適さない。
ダム式発電では,ダムに水を蓄えることで (イ) の調整ができるので,電力需要が大きいときにあわせて運転することができる。

河川の自然の流れをそのまま利用して発電する方式を (エ) 発電という。貯水池などを持たない水路式発電所がこれに相当する。

1 日又は数日程度の河川流量を調整できる大きさを持つ池を持ち,電力需要が小さいときにその池に蓄え,電力需要が大きいときに放流して発電する方式を (オ) 発電という。
自然の湖や人工の湖などを用いてもっと長期間の需要変動に応じて河川流量を調整・使用する方式を貯水池式発電という。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。



[解説・回答]
水力発電所の分類に関する問題です。
基本的な内容と思いますので、確実に正解したい問題です。

(ア)
選択肢より、"落差"か"流量"が入ることになります。
水路式, ダム式ダム水路式と記載がありますが、これらはダムの取水方式の違いです。
簡単に説明すると、水路式はダムを用いずに河川から取水るする方式、ダム式はダムを作り水をせき止める方式、ダム水路式はダムと水路両方を用いる方式です。
つまりここには落差が入り、水路式は河川の上流下流の落差を用いて、ダム式はせき止めた水による落差を用い、ダム水路式はその両方の落差を用います。

(イ)
ここも"落差"か"流量"が入ることになります。
流込み式,調整池式,貯水池式,揚水式とありますが、これらはタービンに流入する流量の調整方法となります。
流れ込み式は流量調整しない方式、その他3つは池を用いて流量調整する方式です。
従ってここは流量が入ります。


(ウ)
水路式ダム式ダム水路式に対するメリット若しくはデメリットが問われています。
メリットは、ダムを造らないので建設期間が短い建設費が安いことが挙げられます。
デメリットは高落差を得にくいことが挙げられます。
ここでは正解の選択肢が3つあります。

(エ)
(イ)で解説していますが、河川の自然の流れをそのまま利用して発電する方式は流れ込み式となります。

(オ)
1日又は数日程度の河川流量を調整する方式は、調整池式となります。
揚水式も河川流量を調整する方式となりますが、揚水式は河川の上流下流に2つの池を持ち、昼間に電力が余った際は下流の池から上流の池に水を移送させておき、電力不足となった際に発電する方式となります。従って、文意とあいません。
尚、貯水池式との違いは問題文の記載の通り、期間の需要変動に応じて河川流量を調整・使用する方式となります。

ここまでを纏めると、
(ア)落差、(イ)流量、(ウ)建設期間が短い or 建設費が安い or 高落差を得にくい、(エ)流れ込み式、(オ)調整池式
となります。

答え:(5)