電験マンのブログ

電験三種の過去問の回答・解説を掲載します。

電験三種 R2(2020年).理論 問13

[問題]
演算増幅器及びそれを用いた回路に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 演算増幅器には電源が必要である。

(2) 演算増幅器の入力インピーダンスは,非常に大きい。

(3) 演算増幅器は比較器として用いられることがある。

(4) 図1の回路は正相増幅回路,図2の回路は逆相増幅回路である。

(5) 図1の回路は,抵抗 RS を 0 Ω に(短絡)し,抵抗 RF を ∞ Ω に(開放)すると,ボルテージホロワである。

[演算増幅器の基本の解説]
演算増幅器(オペアンプ)についての知識を問う問題です。演算増幅器の基本についてまず最初に解説したいと思います。

演算増幅器の目的ですが、簡単に言うと、入力した電圧を増幅し出力することです。
理想的な演算増幅器の重要な特徴は以下が挙げられます。

  1. 入力電圧が電圧降下せずそのまま入力される。
  2. 出力電圧も電圧降下せずそのまま出力される。

1.については、入力端子間で電位差が無く、仮想的に短絡しているように考えることが出来ます。これを、仮想短絡(イマジナリーショート)と言います。

次に、電験三種の問題に出てくる演算増幅器の種類は、図1の正相増幅回路(非反転増幅回路)と図2の逆相増幅回路(反転増幅回路)の2種類が多いです。
図1の回路の電流の向きを記載すると以下のようになります。
ここで回路に流れる電流Iを用いると、 Vout =  R_F×I + Vinとなります。
また、 Vin = R_s×Iとなるので、 I = \dfrac{Vin}{R_s}となり、  Vout = (1+\dfrac{R_s}{R_F})×Vinとなります。
従って、出力電圧は、入力電圧の (1+\dfrac{R_s}{R_F})倍となります。
入力電圧と出力電圧が同位相の為、図1の回路は正相増幅回路(非反転増幅回路)と呼びます。

次に図2の電流の向きを記載すると以下のようになります。

図1と同じく、回路に流れる電流Iを用いると、 Vin = R_s×Iとなります。(入力端子での電圧は0Vとなるので、左式が成り立ちます。)
 Vout = -R_F×Iとなりますので、 Vout = -\dfrac{R_F}{R_s}×Vinとなります。
従って、出力電圧は、入力電圧の  -\dfrac{R_F}{R_s}倍となります。
出力電圧は入力電圧の逆位相となりますので、図2の回路は逆相増幅回路(反転増幅回路)と呼びます。

[問題の解説・回答]
(1) は、電源が無いと電圧を増幅できないので〇です。

(2) は、上記の演算増幅器の解説に記した通り〇です。

(3) ですが、比較器とは入力された2つの信号を比較し、その大小により出力信号が切り替わる回路のことです。演算増幅器が比較器として用いられることがあるので〇です。これは知らないと解けないですね。

(4) は、上記の演算増幅器の解説に記した通り〇です。

(5) ですが、電圧増幅率が1の回路がボルテージホロワとなります。選択肢通りに抵抗 RS を 0 Ω に(短絡)し,抵抗 RF を ∞ Ω に(開放)すると,抵抗Rs側に電流が流れ、電圧増幅率が1となりません。
正しくは、抵抗 RS を ∞ Ω に(開放)し,抵抗 RF を 0 Ω に(短絡)する、となります。従って、(5) が×となります。

答え:(5)