電験マンのブログ

電験三種の過去問の回答・解説を掲載します。

電験三種 R2(2020年).電力 問10

[問題]
次の文章は,架空送電線路に関する記述である。

架空送電線路の線路定数には,抵抗,作用インダクタンス,作用静電容量, (ア) コンダクタンスがある。
線路定数のうち,抵抗値は,表皮効果により (イ) のほうが増加する。また,作用インダクタンスと作用静電容量は,線間距離 D と電線半径 r の比 D/r に影響される。
D/r の値が大きくなれば,作用静電容量の値は (ウ) なる。

作用静電容量を無視できない中距離送電線路では,作用静電容量によるアドミタンスを 1 か所又は 2 か所にまとめる (エ) 定数回路が近似計算に用いられる。
このとき,送電端側と受電端側の 2 か所にアドミタンスをまとめる回路を (オ) 形回路という。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。



[解説・回答]
架空送電線路の線路定数に関する知識を問う問題です。
良く出題される分野なので確実に正解したい問題です。

まず、線路定数とは、送電線の電気的特性を表す数値のことです。電線の抵抗値やインダクタンス値はどれくらいあるのか、という数値です。
線路定数には、以下の4種類があります。

* 抵抗
* 作用インダクタンス
* 作用静電容量
* 漏れコンダクタンス

ということで、(ア)は、"漏れ"となります。
電線から、がいしなどの絶縁物の表面にわずかに漏れ電流が流れます。この漏れ電流の流れやすさを示したものを漏れコンダクタンスと言います。

(イ)は直流か交流が入ります。表皮効果とは、電線に交流が流れた際、電線の中心部分で電流が流れにくくなり、実質的な断面積が減少し、抵抗が大きくなります。これを表皮効果と言います。
ということで、表皮効果は交流に起きる現象の為、(イ)は"交流"となります。

(ウ)は、作用静電容量と線間距離、電線半径の関係性についてです。
作用静電容量 C [μF/km]は、線間距離 D [m]、電線半径 r [m]を用いて、
 C = \dfrac{0.02413}{log_{10}\dfrac{D}{r}} と表せます。
この式を覚えておく必要はありませんが、 \dfrac{D}{r}が大きくなると、作用静電容量 Cは、"小さく"なるということは覚えておいた方が良いです。

(エ)と(オ)は、送電線の近似計算についての問いです。
作用静電容量の値を求める際に、複数のアドミタンスを別々に計算すると大変ですので、問題文の通り、1又は2か所にまとめて計算を行います。
この様なアドミタンスをまとめた回路を"集中"定数回路と言います。ということで、(エ)は集中となります。
集中定数回路には、送電端側と受電端側の2か所にアドミタンスをまとめたπ形回路と、送電線の中央にアドミタンスをまとめたT型回路があります。
ということで、(オ)はπ となります。
π形回路とT型回路の例は以下を参照ください。


ここまでを纏めると、(ア)漏れ、(イ)交流、(ウ)小さく、(エ)集中、(オ)π となります。

答え:(1)