電験マンのブログ

電験三種の過去問の回答・解説を掲載します。

電験三種 R2(2020年).電力 問6

[問題]
架空送電線路に関連する設備に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 電線に一様な微風が吹くと,電線の背後に空気の渦が生じて電線が上下に振動するサブスパン振動が発生する。振動エネルギーを吸収するダンパを電線に取り付けることで,この振動による電線の断線防止が図られている。

(2) 超高圧の架空送電線では,スペーサを用いた多導体化により,コロナ放電の抑制が図られている。スペーサはギャロッピングの防止にも効果的である。

(3) 架空送電線を鉄塔などに固定する絶縁体としてがいしが用いられている。アークホーンをがいしと併設することで,雷撃等をきっかけに発生するアーク放電からがいしを保護することができる。

(4) 架空送電線への雷撃を防止するために架空地線が設けられており,遮へい角が小さいほど雷撃防止の効果が大きい。

(5) 鉄塔又は架空地線に直撃雷があると,鉄塔から送電線へ逆フラッシオーバが起こることがある。埋設地線等により鉄塔の接地抵抗を小さくすることで,逆フラッシオーバの抑制が図られている。

[解説・回答]
送電線の障害とその対策についての知識を問う問題です。
毎年のように出題されている分野ですので、覚えておきたい内容です。


選択肢を1つずつ見ていきます。

(1)は×です。電線に微風が吹き、背後に空気の渦が生じて電線が上下に振動する現象は、"微風振動"と言います。
多導体の送電線に風速10m/s以上の風が吹き、電線が振動する現象のことをサブスパン振動と言います。
下図のスペーサ間のことをサブスパンと言います。

出典:住電機器システム株式会社 HP

スペーサ|製品情報|住電機器システム株式会社


尚、電線の背後に出来る空気の渦のことを、カルマン渦と言います。

(2)は〇です。コロナ放電とは、電線表面の電界が空気の絶縁耐力を超え、電線表面から放電する現象です。ギャロッピングとは、氷や雪が付着した電線に風が当たると、電線に揚力が発生し、電線が上下に大きく振動する現象です。問題文に記載の通り、スペーサを用いることでギャロッピングを防止することが出来ます。

(3)は〇です。電線と、鉄塔などの支持物を絶縁するために使用するものを碍子(がいし)と言います。鉄塔を見てみると、傘の様な物体が連なっているものが付いています。あれが碍子です。
国内のメーカーでは、日本がいしさんが有名ですね。

www.ngk.co.jp
アークホーンとは、問題文にある通り、がいしを保護する目的で付いている金属電極で、がいし表面からでなく、アークホーンから放電することで、がいしを保護します。

(4)は〇です。架空地線とは、鉄塔の最上部に張られる接地線のことです。雷は送電線でなく架空地線に落ちるので、送電線への雷害を防ぐことが出来ます。遮へい角とは、架空地線と、鉛直方向線とのなす角度のことで、小さいほど雷撃を防止する効果が高くなります。

(5)は〇です。逆フラッシオーバとは、鉄塔や架空地線に落雷があると、鉄塔の電位が非常に高くなり、がいしが絶縁破壊され送電線へ雷電流が流れる現象のことです。
埋設地線とは、鉄塔と地面をつなぐ接地線のことです。鉄塔の接地抵抗が減少するので、雷電流が地面へと流れていき、逆フラッシオーバの発生を防止できます。

(4),(5)の内容を簡略図に示すと以下のようになります。


答え:(1)

碍子、アークホーンなどは街中の電柱にも付いています。実物を見てみると記憶にも残りやすいので、勉強の合間に散歩して眺めてみてください。