電験マンのブログ

電験三種の過去問の回答・解説を掲載します。

電験三種 R2(2020年).機械 問15

[問題]
定格出力 45 kW ,定格周波数 60 Hz ,極数 4 ,定格運転時の滑りが 0.02 である三相誘導電動機について,次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) この誘導電動機の定格運転時の二次入力(同期ワット)の値 [kW] として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1)  43   (2)  44   (3)  45   (4)  46   (5)  47

(b) この誘導電動機を,電源周波数 50 Hz において, 60 Hz 運転時の定格出力トルクと同じ出力トルクで連続して運転する。
この 50 Hz での運転において,滑りが 50 Hz を基準として 0.05 であるときの誘導電動機の出力の値 [kW] として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1)  36   (2)  38   (3)  45   (4)  54   (5)  56

[解説・回答]
三相誘導電動機に関する計算問題です。(a)は基礎的な内容ですが、(b)は少しひねった問題です。

(a)
誘導電動機の二次入力 P_2、滑り s、定格出力 P_0の関係は、
 P_2 = \dfrac{P_0}{1-s}で表すことが出来ます。

従って、二次入力 P_2は、 P_2 = \dfrac{45}{1-0.02} = 45.9 [kW] となります。

答え:(4)

(b)
この問題を解くには、誘導電動機のトルク、回転数、出力の関係性を理解する必要があります。
まず、誘導電動機のトルク T [N・m]、出力 P_0 [W] の関係は、角速度 ω [rad/s]を用いて、 P = ωTと表せます。
角速度 ω [rad/s]と、回転数 N  min^{-1} の関係は、 ω = \dfrac{2πN}{60}となるので、誘導電動機のトルク、回転数、出力の関係を整理すると、
 P = ωT = \dfrac{2πN}{60}Tとなります。

従って、この問題で求められている誘導電動機の出力は、トルク T と50Hzでの回転数 N を求めることで答えを出すことが出来ます。

まずは、定格出力トルクを求めます。
問題文より 60 Hz 運転時の定格出力トルクと同じ出力トルクとなります。
60 Hz 運転時の定格出力トルクは、定格出力45kWという情報と、滑り0.02から定格速度を求めることで算出出来ます。
ここで、定格速度を求めるプロセスも2段階考える必要があります。
まず、誘導電動機の定格速度 Nは、同期速度 N_s、滑り sを用いて、 N = N_s(1-s)となります。
同期速度 N_sが未知ですが、極数 pと、周波数 f [Hz]を用いて、 N_s = \dfrac{120}{p}f min^{-1})となりますので、
 N_s = \dfrac{120}{4}×60 = 1800 min^{-1})となります。
従って、定格速度 Nは、 N = N_s(1-s) = 1800(1-0.02) = 1764 min^{-1})となります。
最後に、定格出力トルク Tは、 T = \dfrac{P}{ω}より、 T = 54 ÷ \dfrac{2π×1764}{60} となり、これを計算すると、 T = 0.244 [kN・m]となります。


これで、50Hz下でのトルクが求められましたので、次に50Hzでの回転数を求めます。
これは、上記と同じプロセスで、まず50Hz下での同期速度を求めます。
 N_s = \dfrac{120}{4}×50 = 1500 min^{-1})となります。
次に、滑り0.05から定格速度を求めます。
 N = N_s(1-s) = 1500(1-0.05) = 1425 min^{-1})となります。

最後に、 P = ωT = \dfrac{2πN}{60}Tの式から、出力を求めます。
 P =  \dfrac{2π×1425}{60}×0.244 = 36.4 [kW]となります。

答え:(1)